もぶろぐ

世間知らずOLが少しずつ世の中を知っていくブログ

伊藤計劃『虐殺器官』を読みました

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

読みました。
『ハーモニー』も読んで、この人の書くお話は好きだなあと思いました。

でもはて、なぜ好きなのと言われるとよくわからない。

おそらく、私は、丁寧に優しく描かれた狂気、みたいなものが好きなのだと思います。

狂気を狂気として書かない。
あるコミュニティの中で少数派であっても、どんなに突拍子もない考えであっても、
彼らはきちんと彼らの論理と正義のもとに生きていること。
ただその論理の、正義の根本にある欲望が少しだけ他人と違っていたり、判断の仕方が違っているだけ。
お互いに自分の正義を通して生きているのにこんなに簡単に対立が生じてしまうなんて、こんなにあらぬ方向へ話が転がってしまうなんて、と
ひどく脆い世界の仕組みを描いているようで、
その危なっかしい世界が自分のすぐそばまで迫ってくるようで、
引き込まれてしまいます。

じっさい、社会人になってから「まったく別の世界で生きる人」と会う機会が増えたので、
こういう話は、他人事じゃないななんて思いながら読むのです。

静かな文体もすき。
帯には「ナイーブな語り口」「繊細な文章」とか書かれているくらい、
静かで優しくて、時折他人事とも思えるくらい冷静な文章が
登場人物の感情とスプラッタな出来事を綺麗に描いています。

でもこの話、結構グロい描写もあるから、そういうのが苦手な人は避けた方がいいかも。私も気になってはいたけど手に取るまでに結構な期間を要しました。

以上、今日からは『さよならドビュッシー』を読みます〜。